(11)文章理解とイメージ
速読というと、本をイメージで読む、との主張を時折聞かされます。
このような発言は一部正しく、一部間違いと考えますが、やや詳細な分析を要します。
本はまず第1段に活字を追うことによって読むものです。
その場合に、活字を「絵」のように見ることは、既に述べておりますが不可能といわざるをえません。
論者は、これとはぼ同じ意味で、本はイメージで読むといっているようですが、それなら正しいとは言えません。
第1段に活字を追った結果として、内容がイメージ化され、そのイメージ化によって、文字理解が確かなものになります。そしてこのイメージ化が次行、あるいは次ページ以下の読みにとって、有利に作用します。
これが第2段において本はイメージで読むということであって、これは正しくなります。
これは実は、文脈ないし文脈効果の1種に他なりません。
ところで、第1段の「結果としてのイメージ化」は、一般の読書で、私達は知らず知らずのうちにしており、特殊なことではありません。
「テレビは画面が出るので、イメージが強制的に固定化され不自由だ、その点ラジオの方がイメージが自由にふくらんで良い」などという場合の、それに他なりません。
従って、この意味のイメージ化は、総ての読書にとり重要です。
それが、速読で特に強調されるのは、この意味のイメージ化が、先に1言したように、第2のイメージで読むに、通ずるからに他なりません。
つまりイメージで読むためには、そのイメージがしっかりと心に刻みこまれていることが前提となるからです。
いいかえると、一般の読書法のように、理解できなければ、前のページに後戻りするということが、許されない速読では、その場、その場のイメージ化をしっかりとし、、これを土台に次の場面の処理を速やかにすることが、強く要求されるからです。
この点の説明は、前述、既出情報の処理と似ていますが、両者はその精神を同じくするので、当然のことです。
例えば「近頃、本を読んでも、以前のようにイメージが湧いてこない」等の言葉をきくことがあります。
このようなとき、意識的にイメージ化をはかる訓練を試みてください。
今、読んだ本を、ちょっと伏せて、頭の中に、明確なイメージが湧いてくるまで、話の筋を追うなどして、意識的に努力してみることです。
そのときは多少時間を費やしても、後々の読書にとって、必ず有効に作用します。
教室でも、トレーニング後、目を閉じて、話の内容を、じっくりと考えているタイプの人は必ず本が速く読めるようになるものです。
もっとも、優れた文学作品になると、作者自身がイメージ化に、十分に意を注いでくれている場合が多いようです。
名作、伊豆の踊子では
「道がつづら折になって、いよいよ天城峠に近づいたころ、雨あしが杉の密林を白くそめながら…」
に始まり、旅芸人の一行に会い、踊り子が現れ、情景描写が続きます。
これによって、読者はある種の感性的イメージを植え込まれ、川端文学の世界に引き込まれてゆく、
伊豆の踊り子の書き出しに、読者が魅了される所以です。
以上は、物語とか小説を念頭に置き、主として感性的イメージとして説明してきましたが、、そうすると、法律書とか、経済書とかはイメージ化とは無縁か、という疑問が生じてきます。
しかし、イメージ即ち心像「心に浮かぶもの」とした場合、心に浮かぶものは、上の感性的なものに限らず、抽象的、観念的なものも含まれます。
この後者の実態は「概念」に他なりません。
ですから、法律書、経済書等を読むときは、語、あるいは各文章から、ここの概念を摂取し、それ等全体によって示された概念の構築物を、自己の心像として形成してゆくのだと言えます。
この意味で法律書、経済書等といっても、読書の結果としてのイメージ化が大切なこと自体、同じに考えてよいでしょう。
ただ、その内容が少し異なっているに過ぎません。
異なるといっても、感性的なものを欠く概念も、概念的なものを欠く感性も、もともと考えられないのですから、両イメージ(心像)は、互いに含み合っている、つまり、包摂、被包摂の関係にあることは確かです。
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