無着成恭さんより

無着成恭さんより

無着成恭さんより
明星学院等、戦後教育で広く活躍「やまびこ学校」で全国的な反響を呼ぶ。TBSラジオ「全国子供電話相談室」で1989年まで解答者をつとめる。
「教育ノート」「昭和教育論」等著書多数


考えてみると、私の仕事は、これまで「読む」ということの連続でした。

書類を読む。手紙を読む。子供の作文を読む。テストの解答を読む。論文を読む・・・そして、ついには写真を読む。絵を読む。仏像を読むなどというところまで「読む」という作業が広がってきたのです。
その中で、内容を読み取って確実に処理しなければならないものがあります。
毎日いただく手紙―これなどは内容を読み、返事を書くものは書く、友人や教え子の心のこもった近況にはそれなりの対応をしなければなりません。

それから受験のときの問題文。この場合は問題の意図を確実に汲み取らないといけません。
ピントをはずしたら読んだことにならないからです。
そういうたぐいの「読み」という行為は意外と多いものです。
文学作品や仏典の場合、その哲学、思想、情緒などを、豊かに読む必要があります。
豊かに読むということは、そこに描かれているディテールを頭の中に再生あるいは創造的想像によって描き出し味わうことです。

また文章によっては、声を出して音声化すると、書いた人の気持ちがよく分かる場合があります。
書き言葉(文字言語)より、話し言葉(音声言語)の方がはるかに人間の歴史とともにあったことが、一つの原因になっているからでしょう。

なにはともあれ、どのような本をどう読むかは、受け皿として自分が、どの程度本をどう読めるかにかかっているわけですから、日頃からその受け皿としての「読み」の能力を磨いて置くのは、とても良いことと思います。



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