仮名は1字1音節の表音文字で、「はな」「スイカ」のように、原則として文字がいくつか集まって1つの語を作るので、数文字をまとめて認知する必要があります。
漢字は1文字で1語を作る表意文字なので、漢字1文字を見るごとに、原則1語と認知すればよいだけに、語の認知は仮名よりも楽です。
漢字でも、複数の文字で1つの意味(「平和」「我々」など)を持つ熟語がありますが、
実際の書物を見れば分かる通り、熟語などの前後は、仮名で区別され、別の語であることが視覚的に一目瞭然ですので、漢字は仮名より、語の認知はやはり簡単といえます。
仮名も、文章内でたまたま1文字で1語をなすことがありますが、その前後関係を見なければいけないので、意味の確定には案外手間取ります。
総じて漢字は仮名より認知が簡単である、と言えます。
このことが、速読では2つの点で関連してきます。
第1は、適当な割合の漢字混じり文は、本を読むのが楽に作用します。
第2に、漢字知覚が楽という点が災いし、速読トレーニングの当初から漢字混じり文を使用すると、トレーニング上、あまりよい結果が生じないことになります。
なぜならば、速読のトレーニングはスピードに負荷をかけて読むので、「わかりやすい漢字」と「わかりにくい仮名」が並んでいた場合、漢字だけ読むという「漢字飛ばし読み」になりやすいからです。
文章を正確に読むには全ての文字を読まねばならず、漢字飛ばし読みではトレーニングになりません。
トレーニングで、当初は、漢字表記のない、仮名文字だけの児童書から読んでいただくのはこのためです。